広島県尾道市、小野美智の家。中学3年生の美智は、受験の進路について両親と意見が合わず、激しい口論となった。「美智、お前の将来を思って言ってるんだ!」と両親が声を荒げる中、美智は「もう、人間なんてやめてやる!猫にでもなって、尾道を出てやる!」と叫び、家を飛び出した。
彼女が向かった先は、尾道市にある烏須井八幡神社。心が乱れる美智は、神頼みでもするしかないと思い、神社へと足を運んだ。その神社で「願い玉」と呼ばれるお守りを見つける。「これで私、猫になれるかもしれない…」と、美智は願いを込めてその玉を握りしめた。
美智が願いを込めて願い玉を握りしめると、突然、体が軽くなり、視界が低くなる。そして、自分の体を見ると、そこには小さな猫の姿が。「私、本当に猫になっちゃった…!」驚きとともに、美智の新たな生活が始まった。
美智は、猫になった自分の体を使いこなし、尾道市の千光寺の参道を軽快に駆け上がる。参道には老若男女、観光客や地元の人々が行き交い、彼女はその中をすり抜けていく。「ここからの景色は最高だよ」と地元のおじいさんが観光客に教えているのを聞きつつ、美智は鼓岩へと向かう。
鼓岩からの眺めは、まさに絶景。瀬戸内海に浮かぶ島々、遠くに見えるしまなみ海道、そしてその下を行き交う船たち。美智は、猫の目から見るこの景色に心を奪われる。「こんなに美しい景色が、私の住む街にあったんだ」と感動する。
次に美智が向かったのは、尾道商店街。ここでは、地元の人々が猫たちに優しく声をかけていた。「おいで、おいで」とおばあさんが猫に餌をやり、「ありがとう、ご馳走さま」とおじいさんが猫の頭を撫でる。その優しさに、美智は心を打たれる。
そして、美智は猫の細道をたどる。猫たちが日々を過ごすこの道は、美智にとって新たな発見の場となる。猫たちが寝転び、じゃれ合い、時には見知らぬ人に餌をもらう。その姿を見て、美智は猫たちが街の一部として受け入れられ、愛されていることを実感する。
美智は、猫としての生活を満喫しながらも、次第に人間としての生活を恋しく思うようになる。猫として街を自由に歩き回ることは楽しい。しかし、人間としての生活には、猫では味わえない喜びがあると気づく。
美智は、友達と学校で笑い合ったり、家族と一緒に食事をしたり、好きな音楽を聴いたりすることを思い出す。そして、自分が人間として生きることの大切さを改めて感じる。「猫としての自由は楽しいけど、人間としての生活も私にとって大切なんだ」と美智は思う。
また、美智は、人間としての自分が尾道市をもっと深く理解し、愛することができると気づく。猫の目から見た尾道市の風景は美しい。しかし、それはあくまで猫の視点であり、人間としての視点も大切だと感じる。
人間に戻った美智は、猫として過ごした日々を思い返す。そして、自分が猫になりたかった理由、それは尾道市の魅力にあった。尾道市は「猫の街」とも称され、野良猫の保護に積極的な地域である。美智は、その尾道市の魅力を再認識し、「これからもこの街で、猫たちと共に過ごしていきたい」と心から思った。そして、美智は人間として、尾道市の猫たちと共に過ごす新たな日々を楽しみにしていた。